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貧血|症状と分類、原因【血液内科専門医監修】

✔貧血はよくある症状ですが、その原因や治療法については誤解されていることもあります。

✔貧血により、疲れやすさ息切れ頭痛倦怠感といった症状が現れます。

✔貧血(Hbの低下)がなくても体の中の鉄が低下すると、頭痛や倦怠感といった症状が現れることがあります。4)

慢性的な貧血では、体が貧血の状態に”慣れる”ことで、症状が出にくいことがあります。

貧血とは?どんな状態?

貧血とは、WHO(世界保健機関)の定義では、血液中のヘモグロビン値(Hb)が男性で13.0g/dl以下、女性で12.0g/dl以下1)のことをいいます。 赤血球の中にあるヘモグロビンが体中に酸素を運んでいますが、ヘモグロビンが不足することにより、組織や臓器への酸素供給が不足する可能性があります。

貧血出血などにより急速に進行すると、息切れをはじめとした症状がでやすくなりますが、多くの場合ゆっくりと進行するため、貧血が進行するまで症状がでにくいことも珍しくありません。

特に女性や成長期のお子さんに多い鉄不足は、早めの検査と治療がおすすめです。

貧血の症状

貧血の症状は様々ですが、ゆっくりと進む貧血の場合、無症状のことも多いです。ふわっとするという症状を、貧血と表現することも多いですが、ヘモグロビン値の低下がない場合、医学的には起立性低血圧などと分類されます。もちろん、実際にヘモグロビン値が大きく低下している場合にはふわっとするという症状が出現することもあります。

疲労感、倦怠感

息切れ

頭痛やめまい

氷を好んで食べる

不眠(むずむず足症候群)

異味症

貧血がなくても鉄不足(フェリチンの低下)が、上記のような症状の原因となっていることがあります。4)このような症状のある方は、貧血、鉄不足の検査をおすすめします。

 

赤血球の大きさからの貧血の分類

貧血は、赤血球の大きさ(MCV)によって、小球性、正球性、大球性貧血に分類されます。下記に代表的な貧血をあげますが、小球性、大球性貧血となることがしられている貧血であっても正球性貧血となることもあります。例えば、鉄が不足することでおこる鉄欠乏性貧血は小球性貧血となることが知られていますが、あまり病状が進んでいない時には正球性貧血となります。

※貧血の原因検索は総合的な判断が必要となり、MCVの数値のみで診断することはできません。必ず主治医と相談し治療方針を決定してください。

(文献3などから作成)

小球性貧血(MCV<80)

鉄欠乏性貧血、サラセミアなど

正球性貧血(80≦MCV≦100)

鉄欠乏性貧血初期慢性疾患に伴う貧血慢性腎不全、心不全、葉酸・ビタミンB12不足など。

大球性貧血(MCV>100)

葉酸・ビタミンB12不足、骨髄異形成症候群などの血液疾患など。

 

原因からの貧血の分類

貧血の原因は多様で複雑であるため、下記に代表的な状態について説明しています。貧血を疑われた方は、主治医と相談の上、検査を行い、治療方針を決定してください。

鉄欠乏性貧血

最も一般的なタイプで、鉄分の不足が原因です。特に女性の方は月経などで鉄分が不足しやすく、鉄欠乏性貧血になりやすい傾向にあります。

出血

怪我などでたくさん出血をしてしまっても貧血になりますが、例えば胃がんや大腸がんなどからじわじわと出血し、貧血となっていることがあります。初めて貧血を指摘された方(特に40代以上の方)では、胃がん、大腸がんなどの検査をおすすめいたします。また、月経で経血量の多い方は婦人科でご相談されることをおすすめいたします。

慢性疾患による貧血(ACD)

慢性的な炎症(関節リウマチや、膿瘍など)は、鉄の利用障害などがおこるため、貧血となることがあります。

ビタミンB12の不足

胃を手術で切除した方ではビタミンB12の吸収が低下するため、ビタミンB12不足となることがあります。その他にも萎縮性胃炎をはじめ、ビタミンB12不足となる状態はあるため、大球性貧血となっている場合には、検査が必要です。

葉酸の不足

アルコールの摂取が多い方高齢者などで不足することがあります。また、一部の薬剤でも葉酸が不足しやすい状態となります。

銅の不足

銅の摂取不足に加え、亜鉛の過剰摂取により、銅の吸収が低下し銅不足となることがあります。

その他

血液疾患や薬剤などで貧血が引き起こされる可能性があります。

 

貧血の検査とその解釈

血算

血液検査によって、ヘモグロビン(Hb)の数値や血球の大きさ(MCV)といった数値を確認します。

フェリチン

フェリチンとは貯蔵鉄の指標とされています。鉄欠乏性貧血の場合、まずはHbの数値が改善し、その後フェリチンが上昇します。

その他、必要に応じて、ビタミンB12や葉酸の濃度などの詳細な検査が行われます。

フェリチンの値の解釈

フェリチンのカットオフ値としては、30-45ng/mlなどが用いられます。4)一方で、この値以上であっても症状があるときは鉄不足を疑うことがあります。また、高齢者の方や基礎疾患のある方(慢性心不全、慢性腎不全、炎症性腸疾患など)では、更に高いカットオフ値(100ng/mlなど5,6))が用いられることがあります。フェリチンの数値に関しては、主治医の方と相談してください。

貧血の治療

原因によって異なりますが、ここでは鉄欠乏性貧血を取り上げます。

鉄欠乏性貧血は月経などの影響で女性に多い貧血です。一方で、胃がんや大腸がんなど、消化管からの出血がある場合にもおこります。そのため、初めて鉄欠乏性貧血を指摘されたり、急速に進行している場合には、上部・下部内視鏡検査などで消化管からの出血(胃潰瘍、胃がんや大腸がん)などを否定することをおすすめいたします。また、過多月経のある場合には婦人科でご相談されることをおすすめいたします。詳しくは、当院までご相談ください。

鉄欠乏性貧血の治療は、鉄分の補給になります。食事から十分な量の鉄をとることはなかなか難しいため、鉄剤を内服することが一般的です。

鉄剤の飲み方

鉄剤を飲むと、一時的にヘプシジンというホルモンの血中濃度が上昇することにより鉄の吸収が低下します。そのため、鉄剤は1日1回、もしくは2日に1回の内服が合理的2)であるようです。

また、鉄剤では嘔気がでてしまう方もいます。その際には鉄剤を減量したり、食事中や就寝直前に内服すると改善することがあります。2日に1回内服することも有用です。

注射薬で鉄を投与すると鉄が過剰になることがあるため、基本的には鉄不足は飲み薬で治療します。

 

まとめ

貧血はよくある病気ですが、はっきりとした症状がでず、なかなか気づかれないことがあります。鉄不足は倦怠感や頭痛、疲労感などの原因となっていることがあり、このような症状がある時も検査がおすすめです。

また、貧血は消化器系の癌の兆候である可能性もあります。貧血を疑う症状がある場合や、健診などで貧血を指摘された場合は、早めに医療機関を受診し、適切な診断と治療を受けることが重要です。

 

この記事は、血液内科専門医のファクトチェック・監修を受けています。

参考文献

1)WHO: Guideline on haemoglobin cutoffs to define anaemia in individuals and populations 

2)UpToDate: Treatment of iron deficiency anemia in adults

3)UpToDate :Diagnostic approach to anemia in adults

4)UpToDate :Causes and diagnosis of iron deficiency and iron deficiency anemia in adults

5)Am Fam Physician. 2018 Oct 1;98(7):437-442. 

6)Am J Hematol. 2017 Oct;92(10):1068-1078.

 

免責事項
  • この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
  • この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
  • 記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。ご意見、ご指摘はこちらからお願いします。
この記事の執筆者

豊田かなでクリニック
院長:加藤友大

医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医

2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。

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最終更新日:2025/2/26

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