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心筋炎|その種類と原因【循環器専門医が解説】

心筋炎とは

心筋炎は、心臓の筋肉(心筋)に炎症が起こる病気です。この炎症により、心臓の収縮機能が低下して心不全の症状が現れたり、炎症により心臓の電気的な活動が異常をいたし、不整脈といった症状となって現れることがあります。原因としてはウイルス感染が最も一般的ですが、細菌感染、薬剤の副作用、自己免疫疾患なども原因となることがあります。時として命に関わる状態となることがあり、注意が必要です。

心筋炎の分類(時間経過によるもの)

日本のガイドラインでは、下記のように分類されています。1)

急性心筋炎

発症から30日未満のもの。炎症細胞浸潤と、それに伴う心筋傷害像がみられます。心筋の浮腫などがみられます。特に、劇症型心筋炎では急速に心機能が低下し、命に関わる状態となることがあります。

慢性活動性心筋炎

発症から30日以上のもの。炎症細胞浸潤と、それに伴う心筋傷害像がみられます。線維化、脂肪化、心筋症類似の心筋細胞の変化をみとめます。

慢性炎症性心筋炎

発症から30日以上のもの。炎症細胞浸潤をみとめるが、それに伴う心筋傷害像をみとめません。線維化、心筋症類似の心筋細胞の変化をみとめます。

心筋炎の原因

感染性

ウイルス感染が最も多いですが、その他に細菌なども原因となります。1)

ヒトヘルペスウイルス6、コクサッキーウイルスB3、コロナウイルスや、下記のウイルスが知られています。

アデノウイルス、エンテロウイルス

心筋細胞に一過性に感染しやすいと考えられています。

インフルエンザAウイルス、インフルエンザBウイルス

間接的に免疫系を活性化すると考えられています。

非感染性

薬剤膠原病サルコイドーシスなどが原因としてあげられます。

心筋炎の症状

心筋炎の症状は軽度から重度までさまざまです。

心筋炎はウイルス感染が契機となることも多く、当初はかぜ/インフルエンザなどであったものが、経過とともに心筋炎に進展することがあります。

ウイルス感染に伴う心筋炎では、1-2週間の炎症期の後に、軽快に向かうことが多いと考えられます。1)

心不全症状

心臓の収縮力が落ちるなどの心機能の低下により、息切れ疲れやすさ下肢のむくみなどがでることがあります。

不整脈

心筋の炎症により、心臓の電気的な活動が異常をきたし、不整脈が起こりやすくなります。動悸や脈が飛ぶ、などの不整脈症状がでることがあります。

胸痛

かぜの症状のあと、1〜4週後に左胸の痛みが出現することが多いです。1)

心臓を包む膜である心膜の炎症である、心膜炎を合併している場合には、息を吸ったり、咳をした時に痛みがひどくなり、前かがみになると痛みが軽くなることが特徴です。1)

 

初期には症状に乏しいことも多く、症状がひどくなってきた場合には早めに医療機関を受診し、診断と治療を受けることが重要です。

診断

心筋炎の診断には、以下のような検査が行われます。

心電図

心臓の傷害を反映して、ST-T異常などの心電図変化が現れます。

血液検査

炎症マーカーや、トロポニンやCKなどの心筋マーカー、心不全のマーカー、その他、原因検索目的のウイルス抗体価などを測定します。

心電図などで心筋炎が疑われた際には、高次医療機関での精査をおすすめします。

心エコー検査

心筋の浮腫や収縮力などを評価します。

心臓MRI、心筋生検

高次医療機関での検査となります。

治療方法

心筋炎の治療は原因や症状の重さにより異なります。

心不全をきたしている場合には、心不全に対する治療が行われます。

また、劇症型心筋症などで心機能が大きく低下してしまった場合には、体外設置型補助人工心臓(VAD)などが必要となることもあります。

まとめ

心筋炎は軽い症状から始まることが多いですが、時として重症化してしまうことがあります。胸の痛みや、息切れなど気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。

 

参考文献

1)日本循環器学会:2023年改訂版 心筋炎の診断・治療に関するガイドライン

 

免責事項
  • この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
  • この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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この記事の執筆者

豊田かなでクリニック
院長:加藤友大

医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医

2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。

Web問診・オンライン予約・オンライン診療などのデジタルトランスフォーメーション(Dx)を取り入れ、「スムーズな体験で健康管理をもっと手軽に」するクリニックを目指しています。

今後は、AIトランスフォーメーション(AIX)を積極的に取り入れ、温かな医療で地域の皆様の健康を守る「未来の医療のカタチ」を創っていきたいと考えています。

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最終更新日:2025/2/28

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