歩くと足が痛くなる・足の血流が悪い
しばらく歩くと足が痛くなる、休むとまた歩けるようになる方はいらっしゃいませんか。このような症状を、間欠性跛行といいます。間欠性跛行の原因には、足の血流が悪くなっておこるものと神経の圧迫によって起こるものの2種類があり、足の血流が悪くなる下肢閉塞性動脈硬化症(末梢動脈疾患:PAD)と、腰の神経が圧迫されておこる腰部脊柱管狭窄症の2つが代表的です。
末梢動脈疾患(下肢閉塞性動脈硬化症)とは?
動脈硬化とは、生活習慣病(糖尿病、高血圧、脂質異常症)や、肥満、喫煙などが原因となり、血管が硬くなったり、細くなってしまう状態のことをいいます。
※20年以上禁煙すると、閉塞性動脈硬化症のリスクは喫煙していない人と同じになります。
歩くときには、筋肉が酸素などを必要とします。末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)になると、動脈硬化により足の血管が細くなってしまい、足にいく血流が悪くなった結果、歩く時に必要な量の血液が供給されない状態となります。その結果、少し歩くと足が痛くなります。ふくらはぎの筋肉が痛くなることが多いようです。そして、休むとまた歩けるようになりますし、ゆっくりであれば、より長い距離を歩くことができます。
検査
ABI (ankle-brachial index)≤0.9であると、末梢動脈疾患(閉塞性動脈硬化症)が疑われます。1,2)ABIは手と足の血圧を測ることで算出され、簡単に行うことができ、当院でも当日中に行うことができます。いわゆる、「血管年齢」を測る検査に含まれます。
詳しく調べるには、CT, MRI, カテーテル検査などが必要となります。
予防と治療
生活習慣病の適切な管理
動脈硬化の原因をしっかりと治療しましょう。
運動
運動をすることで、足の血行がよくなります。(側副血行路の形成)
抗血小板薬
いわゆる、「血液をサラサラにする薬」です。
スタチン
コレステロールを下げる薬です。動脈硬化の進行を予防します。
カテーテル治療、手術
腰部脊柱管狭窄症とは?
背骨の中には、神経の通り道(脊柱管)があります。神経は、脳から背骨の中を通って、最終的には足の先までつながっています。この神経の通り道が圧迫されることで、足の痛みが出現します。特に太ももやすねの外側が痛くなることが多いようです。
この痛みは、神経の圧迫されやすい姿勢ででるため、歩いたり、立ち続けている時に出現しますが、前かがみになる、座って休むなどの姿勢で楽になります。また、自転車に乗っているときも、前かがみになっているため痛みは出にくいようです。
検査
MRIなどの検査をします。
この病気は整形外科や脳神経外科が専門となるため、専門の病院をご紹介いたします。
閉塞性動脈硬化症と腰部脊柱管狭窄症は見分けることが難しいことも多いため、簡単に行うことのできるABIという検査で閉塞性動脈硬化症が否定的であるということを確認してからMRIの検査を受けることも、おすすめです。当院ではABIの計測が可能です。
まとめ
歩くことは健康につながりますが、痛みのために歩けない、という場合は、適切な診断・治療をうけることで、歩行時の足の痛みがなくなるかもしれません。しばらく歩くと足が痛くなる、という方は、一度当院にご紹介ください。
厚生労働省の疾患の説明サイトへのリンクは下記からどうぞ。
参考文献
1)UpToDate: Clinical features and diagnosis of lower extremity peripheral artery disease
2)日本循環器学会:2022 年改訂版 末梢動脈疾患ガイドライン
3)日本循環器学会 2025 年 JCS/JSVS ガイドライン フォーカスアップデート版 末梢動脈疾患
免責事項
- この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
- この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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豊田かなでクリニック
院長:加藤友大
医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医
2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。
Web問診・オンライン予約・オンライン診療などのデジタルトランスフォーメーション(Dx)を取り入れ、「スムーズな体験で健康管理をもっと手軽に」するクリニックを目指しています。
今後は、AIトランスフォーメーション(AIX)を積極的に取り入れ、温かな医療で地域の皆様の健康を守る「未来の医療のカタチ」を創っていきたいと考えています。
医師紹介はこちら最終更新日:2025/4/20