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心房細動【循環器専門医が解説】

胸がどきどきする動悸がする脈が飛ぶといったような不整脈の症状は、心房細動かもしれません。

心房細動は重症の脳梗塞や心不全を引き起こすことがあり、適切な治療が必要です。症状がなくても、血液をサラサラにする薬などの治療が必要です。

心房細動は、カテーテル治療などにより根治することが可能ですが、時間がたつと治りにくくなるため、早めの治療が必要です。

心房細動の原因

心臓は4つのお部屋(右心房、左心房、右心室、左心室)から構成されます。心房細動では、この心房(上のお部屋)と呼ばれるところで電気的な信号がたくさんでて、常に収縮する信号がでている状態になります。

心房(上のお部屋)から一部の電気信号が心室(下のお部屋)に伝わり、心室がランダムに収縮するため、脈はばらばらになります。

心房細動は、はじめは数分から数時間といった短い期間持続しますが(発作性心房細動)、徐々に長時間持続するようになり、やがては、ずっと持続するようになります。

心房細動が起こると、心臓はより心房細動が起こりやすい状態へと変わっていってしまいます(心房のリモデリング)。そのため、心房細動が見つかった方では、早めに治療をすることが大切です。状況に応じて、カテーテルアブレーションなどの治療を受けていただくことをおすすめしています。

(AF begets AF. と表現されます。心房細動自体が心房細動をひきおこす、という意味です。3,4))

心房細動の症状

息切れ

脈の乱れ

動悸

心房細動の持続期間による分類

発作性心房細動 (paroxysmal AF)

持続期間が1週間以内のもの。例えば、数時間の心房細動を繰り返したりします。

持続性心房細動 (persistent AF)

持続期間が1週間以上、1年未満のもの。

長期持続性心房細動 (long-standing persistent AF)

持続期間が1年以上のもの。

永続性心房細動

持続期間が1年以上のもので、不整脈をとめることが困難であると、医師と患者が合意しているもの。

心房細動の検査

12誘導心電図(一般的な心電図)、24時間心電図、必要に応じて心エコー検査、血液検査が必要になります。

12誘導心電図

12個の誘導(12種類の波形)を記録して、その方のベースとなる心電図となります。

一方で、心電図を記録しているごく短時間の状況しかわかりません。そのため、数時間などの短い持続期間で繰り返す発作性心房細動の波形を捉えることができないことが多々あります。

ホルター心電図

24時間、場合によってはより長時間、継続的に脈拍をモニターすることができます。2種類の誘導(2種類の波形)を記録します。

とはいえ、ホルター心電図でも24時間、最長で5日間しか記録できません。1ヶ月に1回、不整脈のような症状がある方は、下記のような方法の活用が補助診断として考えられます。

スマートウオッチ

ノイズも多く正確な診断は困難な場合も多いですが、記録状況がよければ診断の助けとなると考えられます。

携帯型心電計

高価ですが、一定以上の精度で心電図を記録することができます。当院では、保険診療では対応しておりません。

※ペースメーカーを使用されている方は、ペースメーカーで心電図が記録されているため、ホルター心電図は必要ないことが多いです。

心房細動の治療法

抗凝固療法

心房細動を起こしている心臓では、心房が小刻みに収縮することで、しっかりと収縮できず、心房(心臓の上のお部屋)が細かく震えているような状態になります。そのため、心房内に血液がうっ滞し、血栓(血の塊)を作りやすくなります。この血栓が脳の血管につまると、大きな脳梗塞(心原性脳梗塞)を引き起こすことがあるため、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)が必要になります。抗凝固薬は、脳出血、消化管出血などの出血リスクを高めることになりますが、脳梗塞の予防効果と出血リスクを比べると、脳梗塞の予防効果の方が大きいため、基本的には抗凝固薬を内服することが推奨されています。

抗凝固薬の種類

血液をサラサラにする薬、は色々ありますが、心房細動では抗凝固薬を用います。

ワーファリン

安価ですが、ビタミンKを多く含む食べ物(納豆や青汁など)は薬の効果を弱めるため、食べることができません。また、薬の効きを確認するために、毎月の採血検査が必要です。

OAC (direct oral anticoagulants: 直接経口抗凝固薬)

食べ物に制限はなく、投与量も腎機能や年齢、体重などにより決まります。ワーファリンにくらべて安全性が高いとされています。

ダビガトラン(プラザキサ)、リバーロキサバン(イグザレルト)、アピキサバン(エリキュース)、エドキサバン(リクシアナ)などがあります。

*バイアスピリンによる治療は抗血小板療法と呼ばれ、抗凝固療法とは異なり、心房細動による脳梗塞の予防効果は不十分です。

*コレステロールの値を下げる薬を血液をサラサラにする薬、と呼ばれることがありますが、これも抗凝固薬とは異なります。

心房細動をとめる治療(rhythm control)

心房細動を停止させるためや、再発を防ぐために抗不整脈薬や、βブロッカーを使用します。

抗不整脈薬としては、ピルシカイニド(サンリズム)、フレカイニド(タンボコール)などがあります。また、βブロッカーとしては、ビソプロロールやカルベジロールといったお薬があります。

脈拍をコントロールする治療(rate control)

心房細動では、時として脈が速くなりすぎるため、βブロッカーというお薬で脈拍を調節することがあります。脈拍の調節の目標値は、平均値で85-110回以下とされています。6)脈拍をコントロール状況を確認するためには、ホルター心電図などが有用です。βブロッカーとしては、上述のビソプロロールやカルベジロールを用います。他に、アンカロン(アミオダロン)などのおくすりが使われることもあります。アンカロンには心房細動をとめる効果も期待できますが、副作用などの兼ね合いもあり、心機能が低下している方など、その適応には注意が必要です。

カテーテルアブレーション

カテーテル治療により、心房細動の根治を目指します。高次医療機関へご紹介いたします。昨今ではカテーテルアブレーションの有用性が示されており、積極的に検討されることも多くなっています。

まとめ

心房細動は、比較的よくある不整脈ですが、無症状であったり、症状がそこまで強くない場合もあります。しかしながら、大きな脳梗塞の原因となったり、はじめは短時間であった心房細動が、ずっと続くようになると心不全の原因になることがあります。脈の乱れが気になった場合には早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けましょう。

豊田市で心房細動の診療なら、内科・生活習慣病と心臓の豊田かなでクリニックへご相談ください。

 

よくある疑問Q&A

心房細動といわれました。抗凝固薬は飲まなくてはいけませんか?

はい、一般的には、飲むことをおすすめします。心房細動では、心臓の中で血栓が形成されてしまい、それが脳梗塞などを引き起こすことが問題です。血栓の形成されやすさは、CHADS2スコアと呼ばれる指標でスコアリングされます。

①心不全:1点

②高血圧:1点

③年齢(75歳以上):1点

④糖尿病:1点

⑤脳梗塞/TIA(一過性脳虚血発作)の既往:2点

これら①〜⑤の合計点数が高いほど、脳梗塞のリスクが高くなります。CHADS2スコアやその他のリスク因子を考慮し、抗凝固療法の導入を決定します。その他のリスク因子には、心房細動の持続している期間や、心臓(左心房)の大きさなどが含まれます。CHADS2スコアが1点以上であれば抗凝固薬が推奨され、0点の場合でもその他の因子を考慮して抗凝固療法が検討されます。1)

主治医と相談し、適切な抗凝固療法を受けることは、脳梗塞を予防するうえでとても大切です。

血液をサラサラにする薬を飲むと、出血しやすくなりますか?

はい、血はとまりにくくなります。また、頭蓋内出血や消化管出血が増えることが知られています。切り傷などから出血をしているときは、傷口をしっかりと圧迫、おさえることで、止血しやすくなります。また、脳梗塞になるリスクと、頭蓋内出血や消化管出血が増えるリスクを総合的に考慮すると、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の内服が推奨されます。

切り傷などから出血をしているときは、傷口をしっかりと圧迫、おさえることで、止血しやすくなります。また、脳梗塞になるリスクと、頭蓋内出血や消化管出血が増えるリスクを総合的に考慮すると、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬)の内服が推奨されます。

心房細動をとめる治療(rhythm control)と脈拍をコントロールする治療(rate control)、どちらがいいですか?

患者さんの状況により異なります。持続性心房細動、特に長期持続性心房細動の方では、薬物によるrhythm controlは難しいことが多いです。その場合には、rate controlを選択することとなります。以前は、rate controlのほうがrhythm controlよりも好まれていた時代がありましたが、近年は、カテーテルアブレーションやrhythm controlがまずは選択されることも多くなってきました。5)

主治医と相談し、治療法を選択してください。

CHADSスコア以外に、心房細動において血栓のできやすさの指標となるものはありますか?

はい、様々な指標が検討されています。長く続いている持続性/永続性心房細動、BMI 18.5Kg/m2未満、左心房の拡大している方(左房径≧45mm)などがリスクとして言及されています。以前は、発作性心房細動と持続性/永続性心房細動では血栓のリスクはあまりかわらない、と言われていましたが、近年ではやはり持続時間が長いほうがリスクが高いことが示唆されているようです。1,2)とはいえ、発作性心房細動の方でもしっかりと抗凝固薬をのむことが、多くの場合には大切です。

 

参考文献

  1. 日本循環器学会 不整脈薬物治療ガイドライン2023/10更新版
  2. 日本循環器学会 2024年JCS/JHRS ガイドライン フォーカスアップデート版 不整脈治療
  3. Circulation. 1995;92:1954–1968 
  4. Circulation: Arrhythmia and Electrophysiology. 2008;1:62–73 
  5. UpToDate: Management of atrial fibrillation: Rhythm control versus rate control 
  6. UpToDate : Control of ventricular rate in patients with atrial fibrillation who do not have heart failure: Pharmacologic therapy 

 

免責事項
  • この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
  • この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
  • 記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。ご意見、ご指摘はこちらからお願いします。
この記事の執筆者

豊田かなでクリニック
院長:加藤友大

医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医

2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。

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最終更新日:2025/2/28

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