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糖尿病の治療|運動と食事とお薬【糖尿病専門医監修】

豊田市・岡崎市で糖尿病の治療を検討中の方へ。豊田かなでクリニックでは、食事療法・運動療法を基本に、薬物療法を組み合わせた治療を提案しています。

この記事では、糖尿病治療の基本方針から薬の種類や選び方まで、糖尿病専門医監修のもと、内科医がエビデンスに基づきわかりやすく解説します。

✔一般的には、HbA1cを7%未満に保つことで、合併症を予防できると考えられています。

✔糖尿病の治療の基本は、食事と運動です。

✔糖尿病の治療では、血糖値に加えて、血圧・体重・コレステロールの管理、禁煙も大切です。

✔糖尿病の薬はたくさんの種類があります。当院では、個々人の状態に応じた選択肢を提供できるように努めています。

糖尿病の原因と合併症

糖尿病の検査

糖尿病とうまく付き合うために

糖尿病と初めていわれた方へ

おそらくはじめのうちは漠然とした不安感があるのではないでしょうか。初めて指摘された方へ聞いてみると、「一生治らない」「合併症で目が見えなくなる、足を切る」など聞いた悲観的な声も多く聞かれます。たしかに糖尿病であることについて、世間からはあまりいい印象を持たれないかもしれないのは事実です。ただ、糖尿病があるからといって「〇〇はできない」「〇〇はしてはいけない」といった制約は決してないということです。逆に、「△△のようにすれば、今まで通りとあまり変わらないような生活ができます」ということがあります。患者さんの状況に合わせてそのポイントを見出し、治療方針を決めていきます。

糖尿病の治療について知っておいていただきたいこと

大きな治療方針としては治療の「3本柱」である運動療法、食事療法、薬物療法があります。その人の糖尿病の状態などに応じて個々人で詳細な方法は相談になることが多いです。治療薬は日々新しいものがでてきます。食事療法や運動療法についても少しずつ新しい内容が分かって言っており、昔は当たり前だったことも徐々に変わっていっています。ただ、この治療の「3本柱」というものが重要であるということについては何年たっても変わりなく、むしろ昨今はより重要視されているような印象もあります。
治療を始めるうえで、覚えてほしいことがあります。それは「血糖値を下げることが目的ではなく、その先にある合併症を予防すること」そして、「糖尿病の治療は血糖値を下げることではなく、下がった状態を保っておくこと」であることです。できるだけ長く血糖値が低い、体に負担のかからない状態でいることが肝要です。よく糖尿病の薬を一旦始めるとやめられない、一生飲まなければならなくなるという話を聞きます。これは正しくもあり、間違ってもいます。長らく内服していた糖尿病の薬を中止しても急に悪化する・反動が起きるわけではなく、単純に内服していなかった頃の状態に戻るだけです。しかし例えばこれからの10年間、血糖値を下げる薬を内服して体への負担を軽くして過ごすか、内服しないで体に負担がかかった状態で過ごすかにより、結果として10年後の合併症の進行具合が違うでしょう。10年の間に半年だけ内服していない時期があっても、10年ずっと内服していなかった場合に比べれば傷み具合は軽いはずです。逆に半年はしっかり内服して血糖値を下げたが、残りの9年半は放置して血糖値が高いままだったとしたら合併症は進行するはずです。できるだけ血糖値の低い日が多い方がいいのです。
ただ、2型糖尿病と一口にいっても、その人の状態はさまざまです。たとえば、糖尿病を発症して間もない人もいれば糖尿病といわれてもう20年、30年とたっている人もいます。若い人もいれば80歳以上の比較的高齢の人もいます。合併症がまだでていない人もいれば、いくつかの合併症がもうすでに出ている方もいらっしゃいます。比較的やせている人もいれば、体重のコントロールが難しい人もいます。それぞれの方はみなさんおなじ「2型糖尿病」ということは共通していますが、その背景が大きく違うのもまた「2型糖尿病」の特徴であり、それぞれの特徴が違うため治療法も大きく異なるのが「2型糖尿病」でもあります。そのため、ガイドラインは、一応存在はしていますが、「これをやれば大丈夫」といったように決まった治療方法というのが確立していないのが現状で、担当医師にもってもことなることが多い印象があります。ただ、先ほども言いましたように、どの状態の人に対しても重要なのは治療の3本柱である運動療法、食事療法、薬物療法であることは間違いありません。

生活習慣の改善

最も大切なのは健康的な食事、運動、体重管理。

日々診療を行う中で、急に血糖値が改善する方がいます。お話をお聞きすると、最近犬を飼い始めて犬の散歩を毎日するようになった、などと日々の運動をはじめたことがきっかけであることが少なくありません。また、逆に、最近腰を痛めて散歩をやめてしまった、などというように、日々の運動が減ってしまった人は、多くの場合、血糖値が高くなる傾向にあります。

間食や甘いものなども血糖値を大きく悪化させる原因となります。血糖値が悪化しているとき、間食が増えていることも少なくありません。

運動

運動をすることで、筋肉へのグルコースの取り込みが促進され、血糖値が低下します。また、インスリン抵抗性も改善します。しかしながら、この効果は運動後48時間ほどしか持続しません3)

どんな運動がいいの?

運動には、有酸素運動筋力トレーニング(レジスタンストレーニング)があります。

両方の運動を取り入れることが血糖値の改善に良いことがわかっています。有酸素運動は、ややきついと感じるくらいの運動が目安です1,3)

運動の頻度

1週間に合計で150分以上3)週3回以上の有酸素運動週2回以上の筋力トレーニングが推奨3)されています。

定期的な運動習慣を取り入れるのはなかなか大変ですが、エスカレーターではなく階段を使う、といったようにちょっとした工夫も有効です。積極的に体を動かすことを意識していただければと思います。

※網膜症や狭心症などがある場合、積極的な運動は推奨されません。主治医と相談して運動を行うようにしてください。

食事

バランスのとれた食事と、1日の総カロリーを適切にすることが大切です。炭水化物を極端に少なくすることに関しては、現在も議論がなされているところですが、2024年のガイドラインでは6〜12ヶ月を目安に、緩やかな炭水化物の制限をすることが提案されています1)

食物繊維便秘の解消小腸での栄養の吸収を緩やかにすることが期待できます。さらに、短鎖脂肪酸の産生など腸内環境を整えることが知られています。糖尿病の方では積極的な食物繊維の摂取が推奨されています1)

食事のコツ
  1. 1日3食を規則正しく食べる。
  2. ゆっくりよく噛んで食べる。
  3. バランスのよい食事を心がける
  4. 塩分・脂質を控えめにする。
  5. 主食(炭水化物)を最後に食べる。

運動もしっかりして、食事も気をつけている、それでも血糖値が悪いです、という方が多いのも事実です。体質(遺伝など)により、生活習慣自体は大きな問題がなくても糖尿病が進行してしまうことがあります。ですので、生活習慣にしっかりと気をつけたうえで、薬物療法を適切に行い、血糖値の管理を行うことが大切です。

血糖値の目標値

血糖値は一般的にはHbA1c 7%未満が目標となります。また、高齢者などでは目標値がHbA1c 8%未満となるなど、その人それぞれの目標値があります。主治医と相談し、目標値を決定してください。

糖尿病治療の目標は、血糖・体重・血圧・コレステロールをしっかりと適切な範囲に維持することで、糖尿病の慢性合併症である神経、目、腎臓の障害や動脈硬化などを予防したり、それらの進行を防ぐことです。

以前は、血糖値は低いほうがよい(正常値に近いほうがよい)と考えられてきました。しかしながら、血糖の正常化をめざすために治療を強化することで、逆に低血糖の状態を作ってしまい、そのことが身体に悪い影響を及ぼすことが知られています。そのため、治療目標は、年齢や、糖尿病の期間、合併症や低血糖の危険性、生活背景などを考慮し、主治医と相談して決定することが大切です。

(文献1より抜粋)

注1:血糖正常化を目指す際には、適切な食事療法や運動療法だけで達成可能な場合、または薬物療法中でも低血糖などの副作用なく達成可能な場合にHbA1cの目標値を6.0%未満とします。

注2:合併症予防の観点からのHbA1cの目標値は7.0%未満です。目安の血糖値としては、空腹時血糖値130mg/dL未満、食後2時間血糖値180mg/dL未満です。

注3:治療強化が困難な際の目標とは、低血糖などの副作用や、その他の理由で治療の強化が難しい場合が該当します。

注4:上記は、大人の方の目標値であり、妊娠中の方は、目標値が異なります。

糖尿病のお薬

 飲み薬には様々な種類があります。下記に代表的なものを表にまとめました。インスリン以外に、現在ではおよそ10系統の血糖降下薬があります。1)それぞれの特徴を活かして、病態に応じて使用します。

これらの他に、インスリンの注射があります。

α-グルコシダーゼ阻害薬

腸での糖の分解を抑制して吸収を遅らせ、食後の高血糖や高インスリン血症を抑えます。食事の直前に内服します。副作用として、おなら下痢などがあります。

デンプンなどの炭水化物は、体内の消化酵素により最終的にはグルコースへと分解され、体内に吸収されます。α-グルコシダーゼは、小腸で炭水化物をグルコースに分解する作用をもちます。α-グルコシダーゼ阻害薬には、アカルボース(グルコバイ)、ミグリトール(セイブル)、ベイスン(ボグリボース)などがあります。

SGLT2阻害薬

第一選択薬の一つとして使われます。腎臓でのブドウ糖の再吸収を抑制して尿中に糖を排出します。体重減少効果もありますが、リバウンドする方も多く、注意が必要です。腎臓や心臓の保護作用もあり、腎不全や心不全の方でも用いられます。

イプラグリフロジン(スーグラ)、ダパグリフロジン(フォシーガ)、ルセオグリフロジン(ルセフィ)、トホグリフロジン(デベルザ)、カナグリフロジン(カナグル)、エンパグリフロジン(ジャディアンス)などがあります。また、他の薬剤との合剤もあります。

ビグアナイド薬

第一選択薬の一つとして使われます。体のインスリンへの反応(感受性)を改善させると共に、肝臓からのブドウ糖の放出抑制し、血糖を改善します。腎機能の悪い方では、減量、中止が必要です。

メトホルミン(メトグルコなど)は、最大で1日に2,250mgまでの投与が行われます。副作用としては、お腹が張る下痢になるといった消化器症状があげられます。妊娠を考えている方、妊娠中の方は服用できません。

チアゾリジン薬

日本では、アクトス(ピオグリタゾン)が使用できます。末梢組織のインスリンへの反応(感受性)を改善させると共に、肝臓からのブドウ糖の放出抑制し、血糖を改善します。

PPARγとよばれる核内受容体転写因子のアゴニストであり、炎症性サイトカインの分泌を抑制することで、インスリン抵抗性を改善させます。副作用として、脂肪組織の分化を促進することで体重が増えてしまうことと、浮腫があげられます。脂肪肝の改善効果も期待できます。2)

イメグリミン

イメグリミン(ツイミーグ)は、2021年に承認されたお薬です。上述の、メトホルミンとよく似た構造をしていますが、テトラヒドロトリアジン系に分類され、ミトコンドリアに作用します。血糖値に応じたインスリン分泌促進作用と、インスリンへの反応(感受性)を改善が期待できます。腎機能の悪い方の内服は、推奨されていません。

DPP-4阻害薬

血糖値に応じたインスリン分泌促進作用が期待できます。多くの種類の薬があります。低血糖のリスクは低いと考えられ、安全性の高いお薬です。

シタグリプチン(ジャヌビア、グラクティブ)、ビルダグリプチン(エクア)、サキサグリプチン(オングリザ)、アログリプチン(ネシーナ)、リナグリプチン (トラゼンタ)、テネリグリプチン(テネリア)、アナグリプチン(スイニー)などがあります。

トレラグリプチン(ザファテック)、オマリグリプチン(マリゼブ)は、1週間に1回の内服でよいお薬になります。

GLP-1受容体作動薬

注射薬です。内服薬(セマグルチド:リベルサス)もあります。血糖値に応じたインスリン分泌促進作用とともに、血糖値を上昇させるホルモンである、グルカゴン分泌の抑制が期待できます。また、胃の動きをゆっくりにすることで、食後血糖の上昇の抑制効果があります。さらに、脳に働きかけて満腹感を高めてくれます。

副作用としては消化器症状があるため、低用量から開始します。

内服

セマグルチド(リベルサス)

週1回の注射

セマグルチド(ウゴービ、オゼンピック)、エキセナチド(ビデュリオン)、デュラグルチド(トリルシティ)などがあります。

1日1回の注射

リラグルチド(ビクトーザ)、リキシセナチド(リキスミア)、エキセナチド(バイエッタ)などがあります。

GIP/GLP-1受容体作動薬

上記のGLP-1受容体作動薬とGIP受容体作動薬の合剤です。チルゼパチド(マンジャロ・ゼップバウンド)などがあります。

スルホニル尿素薬(SU薬)

膵臓からのインスリン分泌を促進させます。低血糖に注意が必要です。

速効型インスリン分泌促進薬(グリニド薬)

上記のSU薬と同様に、膵臓からのインスリン分泌を促進します。SU薬に比べて効果の発現が速く、作用時間が短いため、SU薬と比べて低血糖を起こしにくい薬剤です。

定期的な検査

HbA1cの値を含め血糖値の定期的な確認が必要です。当院では、当日中に糖尿病の指標であるHbA1cの結果を知ることができます。受診時に、現在のご自身の状態を確認し、よりよい治療につなげていただければと思います。

また、糖尿病の合併症の確認のために腎機能目(糖尿病網膜症)歯周病の定期的な検査も必要です。眼科、歯科の受診をお願いいたします。

血圧

糖尿病のある方では、家庭血圧が125/75mmHg未満が目標値となります。高齢者の方などでは、個々人の状況に応じて目標値は135/85mmHgとなることがあります。

LDLコレステロール

糖尿病のある方ではLDLコレステロールは120mg/dl以下が目標値です。タバコを吸っている方や合併症のある方では70-100mg/dl未満が目標値です。主治医と相談し、目標値を確認してください。

まとめ

糖尿病は、多くの方が悩まれる病気の一つであり、生涯にわたる管理が必要となることも少なくありません。しかし、適切な治療と生活習慣の改善によって、糖尿病をうまくコントロールし、合併症を予防することは十分可能です。

どれだけ運動や食事に気をつけていても、血糖値が高くなってしまうことはあり得ます。そのような場合には、必要に応じて薬物療法を上手に活用しながら、無理のない形で血糖管理を続けることが大切です。

豊田市・岡崎市で糖尿病治療についてお悩みの方は、ぜひ豊田かなでクリニックへご相談ください。患者さま一人ひとりに合わせた治療をサポートいたします。

参考文献

1)日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2024

2)UpToDate:Management of metabolic dysfunction-associated steatotic liver disease (nonalcoholic fatty liver disease) in adults

3)UpToDate:Exercise guidance in adults with diabetes mellitus

 

免責事項
  • この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
  • この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
  • 記事の内容に不備、誤りなどありましたら、当院までご連絡いただけますと幸いです。正しい医療知識の普及のため、専門医をはじめとしたプロフェッショナルの方からのご意見・フィードバックを、是非ともお願いいたします。ご意見、ご指摘はこちらからお願いします。
この記事の執筆者

豊田かなでクリニック
院長:加藤友大

医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医

2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。

Web問診・オンライン予約・オンライン診療などのデジタルトランスフォーメーション(Dx)を取り入れ、「スムーズな体験で健康管理をもっと手軽に」するクリニックを目指しています。

今後は、AIトランスフォーメーション(AIX)を積極的に取り入れ、温かな医療で地域の皆様の健康を守る「未来の医療のカタチ」を創っていきたいと考えています。

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最終更新日:2025/4/28

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