かぜの症状と治療法【内科医が解説】対症療法や抗菌薬について
✔かぜをひいた場合はゆっくりと体を休めることが一番です。
✔ウイルス感染であるかぜには、抗菌薬は効果がなく、対症療法が中心となります。
✔かぜの咳には、ハチミツや温かい飲み物なども有効です。
かぜとは
かぜ(風邪)は、主にウイルスによって引き起こされる呼吸器系の感染症の総称です。最も一般的な病気の一つであり、軽い症状ですむことも多いですが、特に小さなお子さんでの一部のウイルスや高齢者、免疫力が低下している人々にとっては注意が必要です。
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原因
風邪は200種類以上のウイルスが原因となりえます。感染しても何度も同じウイルスにかかってしまう(終生免疫ができない)場合と、同じウイルスでも型が違うウイルスが複数存在する(終生免疫が得られるが、ウイルスの血清型が多数ある)場合があるため、何度もかぜにかかってしまいます。
例えば、かぜのウイルスとして有名な、RSウイルスはウイルスの型としては1種類ですが、終生免疫が得られません。一方、同じくかぜのウイルスとして有名なライノウイルスは100種類以上の型があるため、繰り返しかぜにかかってしまいます。
対処法
ウイルス感染であるかぜには抗菌薬はきかないので対症療法を行うのが基本となります。特定のウイルスには、抗ウイルス薬が存在しますが、これは特定のウイルスにしか効きません。
抗ウイルス薬としてもっとも有名なのは、タミフルをはじめとした抗インフルエンザ薬でしょうか。タミフルはインフルエンザのウイルスにしか効果がありません。
他にも、コロナ(Covid-19)、帯状疱疹、ヘルペスのお薬も抗ウイルス薬です。
かぜに抗菌薬を使うデメリット
- 耐性菌の増加
- 腸内細菌叢への悪影響(おなかがゆるくなる、下痢など)
- (特に小さなお子さんでの)アレルギー疾患のリスクの上昇:喘息やアトピー性皮膚炎のリスクがあがることが知られています。
かぜ(ウイルス感染)には抗菌薬がきかないだけでなく、上記のようなデメリットがあるので、抗菌薬には処方されません。
※「かぜかな?」と思っても、肺炎などへの進行をはじめ、抗菌薬を内服することが必要なときもあります。詳しくは、下記の抗菌薬が必要なときをご覧ください。当院では、個々人の状況に応じたお薬の処方を心がけています。
抗菌薬が必要なとき
では、かぜに抗菌薬が処方されるのはどういうときでしょうか。
溶連菌
アモキシシリンなどのお薬が第一選択です。10日間の内服が一般的です。3)
肺炎
かぜをこじらせると、肺炎になってしまうことがあります。そのため、肺炎の場合はもちろん、肺炎への進行リスクが高い場合にも抗菌薬が処方されることがあります。
かぜなどのひき始めに、今後肺炎になるかどうかを見分けることは多くの場合とても難しく、はじめはかぜと診断されることが少なくありません。
高熱が続く、食欲がない、咳やタンがひどくなる、など明らかに風邪が悪化している場合には、医療機関に受診することが必要です。
中耳炎
中耳炎は、耳の奥にある中耳という部分に炎症が起こる病気です。特に子どもに多く見られ、耳の痛みや発熱、耳の詰まり感などの症状を引き起こします。
中耳炎の主な原因は、細菌やウイルスによる感染です。かぜなどの上気道感染がきっかけとなり、耳管(鼻と中耳をつなぐ管)を通じて中耳に細菌やウイルスが侵入することが多いです。中等症以上の方では抗菌薬を使用することが多いです。
副鼻腔炎
副鼻腔炎(ふくびくうえん)は、鼻の周囲にある空洞(副鼻腔)が炎症を起こす病気です。「蓄膿症」と呼ばれることもあります。急性と慢性の2種類があります。急性副鼻腔炎は通常、風邪などの感染症が原因となって発症します。自然に治ることも多いですが、抗菌薬での治療が必要となることもあります。
副鼻腔とは
副鼻腔とは、鼻の周囲にある空洞です。
このうち、上顎洞と篩骨洞は18-24ヶ月、前額洞と蝶形骨洞は6-10才頃までに形成されますので、逆に言うと、それよりも小さいお子さんでは副鼻腔炎にはなりません。
有名な症状としては、鼻詰まり、顔面の痛みや圧迫感、頭痛、黄色の(悪臭のする)鼻汁などがありますが、小さなお子さんではこれらの症状がないことも多く、注意が必要です。
急性細菌性副鼻腔炎の症状の指標
下記のどれかにあてはまる場合は急性細菌性副鼻腔炎の可能性が高くなります。1)
- 39℃以上の発熱と黄色い鼻水(膿性鼻汁)が3日以上持続
- かぜをひいて6-7日目頃に再度悪化する咳、鼻汁、発熱
- 10日間全く改善傾向がなく持続する症状
とはいえ、これらの項目は絶対的な基準ではなく、副鼻腔炎の診断は症状だけでは難しいことも多いです。
当院では、ご本人と相談の上で治療方針を決めていきたいと考えています。
マイコプラズマ肺炎
咳が特徴的な病気です。マイコプラズマでは、マクロライド系やキノロン系の抗生剤が使用されます。3)
かぜの代表的なウイルス
予防
風邪を予防する基本的な対策として以下のことが挙げられます:
- こまめに手を洗う
- マスクを着用する。
- 顔(特に鼻、口、目)を触るのを避ける
- 感染者との接触を避ける
- 十分な休息とバランスの取れた食事を心がけ、免疫力を保つ
また、他の人にかぜをうつさないために、下記のことにも気をつけましょう。
- かぜをひいた場合は、外出を控える。
- マスクを着用する。
- 咳やくしゃみをする際には肘で口を覆う。
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参考文献
1)UpToDate:Acute sinusitis and rhinosinusitis in adults: Clinical manifestations and diagnosis
2)Clin Infect Dis. 2012 Apr;54(8):e72-e112. doi: 10.1093/cid/cir1043.
3)The Johns Hopkins POC-IT ABX Guide
免責事項
- この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
- この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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豊田かなでクリニック
院長:加藤友大
医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医
2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。
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今後は、AIトランスフォーメーション(AIX)を積極的に取り入れ、温かな医療で地域の皆様の健康を守る「未来の医療のカタチ」を創っていきたいと考えています。
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最終更新日:2025/3/4