心臓弁膜症【循環器専門医が解説】
✔心臓には逆流防止の弁が4個ついています。
✔心臓弁膜症には、大動脈弁狭窄症、大動脈弁閉鎖不全症、僧帽弁閉鎖不全症などの種類があります。
✔当院では、循環器専門医による、心エコーでの定期的なフォローが可能です。
心臓弁膜症とは?
心臓弁膜症は、心臓の弁が正常に機能しなくなる状態を指します。心臓は右心房、右心室、左心房、左心室の4つのお部屋に分かれており、それぞれの部屋の出口には逆流防止の弁があります(僧帽弁、三尖弁、肺動脈弁、大動脈弁)。これらの弁によって、心臓内の血液の流れは1方向に保たれています。弁膜症には大きく分けて、「弁の狭窄」(弁が開かない)と「弁の逆流」(弁が閉じない)の二つのタイプがあります。多くの場合、健康診断などで心雑音を指摘され、弁膜症に気が付きます。弁膜症は進行しないと心不全などの症状が出現せず、無症状で経過することがほとんどです。
原因
主には以下のようなものがあります。
加齢による変性
心不全
先天性心疾患
炎症性疾患(例:リウマチ熱)
感染性心内膜炎
症状
ほとんどの場合は無症状です。弁膜症が進行すると、心不全の症状が出現します。
一般的には以下のような症状があります。
息切れ
疲労感
心不全症状(足のむくみや息切れ)
胸の痛みや意識消失(重症の大動脈弁狭窄症の場合)
検査
心臓弁膜症の診断には、通常、聴診、心電図、心エコーなどが用いられます。これらの検査により、弁の機能異常の程度や原因を評価します。
なかでも、定期的な心エコー検査が大切です。検査の頻度は重症度によりますが、一般的には1年に1回程度のことが多いようです。
治療
一般的には心不全症状のコントロール、そして重症になると外科的な治療(手術など)を行います。
薬物療法
主に、心不全症状のコントロールを行います。
手術
重症の場合、弁の形成術(修復)や、弁を交換する手術が行われることがあります。最近では、カテーテルで治療することも増えてきました。
まとめ
心臓弁膜症は、早期発見と適切な管理が重要です。手術による治療が必要となった場合は、速やかに高次医療機関を受診する必要があります。当院では診察時の聴診による心臓弁膜症の発見に努めています。また、必要に応じて心エコー検査により、循環器内科専門医が適切に弁膜症をフォローしています。
弁膜症をもう少し詳しく
大動脈弁狭窄症
心臓から全身に血液を送り出す大動脈弁という逆流防止の弁がかたく、開きにくくなっている状態です。
重症になり、胸が痛くなったり、意識を失ってしまったり、息切れなどの心不全症状がでてくると、その後急速に悪化してしまうことが知られています。
そのため、重症になると手術やカテーテル治療により大動脈弁を人工弁に取り替える必要があります。1)
心エコー検査により弁を通る血流の流速や、弁前後の圧較差を計測し、重症度が決定されます。
手術適応に関しては、重症度に加えて、症状の有無や併存疾患、左室の収縮能なども考慮する必要があるため、主治医とよく相談して治療方針を決めることが大切です。
一般的には、下記が重症大動脈弁狭窄症の目安ですが、他にも低流量低圧格差となる大動脈弁狭窄症もあるため、注意が必要です。
一般的な重症大動脈弁狭窄症の目安
大動脈弁最大血流速度: Vmax≧4.0m/s
大動脈弁平均圧較差:mPG≧40mmHg
大動脈弁の二尖弁と三尖弁とはなにですか?
大動脈弁は3つの弁から構成されています(三尖弁)。しかしながら、生まれつき、大動脈弁が2枚から構成されている方がいます(二尖弁)。そのような方では、三尖弁の方よりも、より早期に手術が検討されることがあります。
大動脈弁閉鎖不全症
心臓から全身に血液を送り出す大動脈弁という逆流防止の弁にもれが生じている状態です。心臓から全身に送り出された血液が、弁の逆流のために効率的に送り出されず、息切れをはじめとした心不全症状が出現します。また、左心室の拡大も生じます。
重症になると、手術で大動脈弁を修復するなどの処置が必要となります。手術の適応に関しては、大動脈弁閉鎖不全症の重症度の他に、症状の有無や併存疾患、左室の拡大の有無や収縮能なども考慮されます。
僧帽弁狭窄症
左心房から血液を送り出す出口にある僧帽弁がかたく、開きにくくなっている状態です。リウマチ熱という病気が原因として有名です。また、生まれつき弁の狭窄がある方もいます。比較的稀な疾患です。手術による治療や、カテーテルによる治療があります。
僧帽弁閉鎖不全症
左心房から血液を送り出す出口にある僧帽弁に逆流がある状態です。心臓の効率が悪くなってしまうため、進行すると息切れなどの心不全症状が出現します。
また、血液が逆流することで左心房の負担が増え、心房細動という不整脈を合併することもあります。手術により弁を人工弁に置き換えたり(僧帽弁置換術)、修復(僧帽弁形成術)したりします。また、カテーテルにより僧帽弁の逆流を減らす治療(経皮的僧帽弁クリップ術:MitraClip)もあります。
参考文献
1)日本循環器学会 2020年改訂版 弁膜症治療のガイドライン
2) UpToDate: clinical manifestations and diagnosis of aortic stenosis in adults
免責事項
- この記事は、より多くの方に病気に関しての知識を深めてていただく目的で執筆しています。病状ごとに、その方に提供される最適な医療は異なるため、治療方針に関しては必ず主治医にご確認ください。
- この記事は、信頼できる専門家の先生方が執筆、監修されているという観点、評価の定まっていない原著論文の引用を控えるという観点から、原著論文に加え、学会発行のガイドラインや、世界的に信頼され、参照されているデータベースであるUpToDateを積極的に参考文献として参照させて頂いております。
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豊田かなでクリニック
院長:加藤友大
医学博士、日本内科学会 認定内科医、日本循環器学会 循環器専門医
2025年11月、「正しい情報に基づいた患者中心の医療」を実践するために、豊田かなでクリニックを開院。「おいでん病気ペディア」では、しっかりとした医学的な根拠に基づき、不必要に不安を煽らない情報の発信を行っています。
Web問診・オンライン予約・オンライン診療などのデジタルトランスフォーメーション(Dx)を取り入れ、「スムーズな体験で健康管理をもっと手軽に」するクリニックを目指しています。
今後は、AIトランスフォーメーション(AIX)を積極的に取り入れ、温かな医療で地域の皆様の健康を守る「未来の医療のカタチ」を創っていきたいと考えています。
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最終更新日:2025/2/28